解決事例

事例22
相続人が多数存在する遺産(不動産)の分割協議において、固定資産税の支払いを長年に渡って事実上行ってきたことを根拠に他の相続人と協議ないし審判を行い、不動産の相続登記を実現させた事例

ご相談内容

ご相談内容

依頼主
相続人:Uさん(40代男性)

福岡県在住のUさんの祖父(被相続人)は平成2年に亡くなられ、Uさんを含めた合計18名が相続人となりました。
なお、被相続人はUさんが当事務所に相談に来られた30年以上も前に死亡されており、被相続人が所有していた不動産(自宅土地建物・農地)は、遺産分割協議が行われず被相続人名義のまま放置されている状況でした。
被相続人の死亡後、本件不動産は、Uさんの父親が管理を行って固定資産税の支払いも継続的に行っており、Uさんの父親が死亡後はUさんがこれを行ってきました。
そのため、Uさんは、本件不動産の名義を単独で取得できないかと考え、他の相続人からの了承も取り付けていましたが、連絡先が分からず面識もない相続人が2名(Aさん、Bさん)いることから、自分で遺産分割協議を行うことは不可能と判断し、当事務所に相談に来られました。

弁護士の活動

弁護士の活動

当事務所は、Aさん、Bさんに対して、Uさんの意向(本件不動産の単独取得)を伝える文書を送付し、同文書に遺産分割協議に関するアンケート(遺産分割協議に協力してもらえるか、協力してもらえる場合に相続分の代償金の取得を希望するか)を添付しました。
もっとも、Aさん、Bさんからは何らの回答もなかったため、Uさんが既に遺産分割協議に了承を頂いている他の相続人全員より、相続分譲渡証書と印鑑証明書を受領した上、Aさん、Bさんを相手方とする遺産分割調停を申し立てました。

解決結果

解決結果

遺産分割調停では、AさんからはUさんの自由にしてよいとの回答を得ることができましたが、Bさんからは何らの回答もありませんでした。
そのため、遺産分割調停は審判に移行しましたが、家庭裁判所は、Bさん以外の相続人全員がUさんが本件不動産を取得することを望んでいること、UさんないしUさんの父親が長年に渡って固定資産税の支払いを事実上行ってきたこと等を根拠に、Bさんに対する代償金の支払いなしに本件不動産をUさんが全部取得するとの審判を受けることができ、経済的負担なしに本件不動産の登記名義をUさんに変更することができました。

弁護士のコメント

弁護士のコメント

今回のケースのように、被相続人の死亡後、速やかに遺産分割協議を行わずに長期間放置したままにしておくと、相続人が極めて多くなって手続き(戸籍の取得、住所の調査等)が煩雑となったり、相続人同士に面識がなく相手方がどのような人物かも分からない状況に陥ることがあります。
なお、2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定され、同年4月21日の参議院本会議で成立しました。
これによって相続登記義務化が2024年4月1日から施行されることとなり、同日以降に不動産の相続が発生した場合は、相続により不動産の所有権を取得した者は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければならず、これに違反すれば10万円以下の過料の対象になります。
そのため、今後は、被相続人の死亡後に速やかに遺産分割協議を行わずに長期間放置することは法的にもできなくなりますので(法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用がある)、現時点で被相続人名義のまま放置されている不動産が存在する場合は、弁護士に相談されることをお勧めします。
松本・永野法律事務所では遺産相続に関する相談は初回無料で行っていますので、遺産相続でお困りの方は当事務所にご相談ください。

文責:弁護士 永野 賢二

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