特別方式の遺言

死期が迫っている時など緊急時には特別方式の遺言が認められています。

利用されるケースは極めて稀ですが、万が一の為の知識として覚えておかれると良いかと思います。

いずれもケースも相続開始時に家庭裁判所による検認が必要です。

また、普通方式の遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密書式遺言)を行なうことが可能になった時から6ヶ月間生存する時は、特別方式の遺言の効力はなくなります。

さらにいずれも複数の証人の立ち会いが必要となります。ただし民法974条により証人・立会人になれない欠格者が定められていますので注意が必要です。

証人・立会人になれない欠格者

  • 未成年者
  • 推定相続人及び
    受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

一般危急時遺言

病気や怪我などで死亡の危急が迫った人が行う遺言です。

遺言者は証人のうち1人に遺言の趣旨を口授し、その証人は遺言の趣旨を筆記します。その後遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧を行ない、内容に間違えがなければ証人の全員が署名・捺印します。

一般危急時遺言の効力を発生させるためには、遺言の日から20日以内に証人もしくは利害関係人が家庭裁判所に確認の請求を行っておく必要があります。

3人以上の証人が必要であり、家庭裁判所へ確認の請求などの手続きもありますので、可能であれば弁護士に相談されたほうがスムーズに手続きを行えます。

作成方法 証人の1人へ口授により作成。その証人は筆記を行う。
証人 3人以上の立ち会い
遺言者による署名・捺印 不要
家庭裁判所の確認 必要

難船危急時遺言

乗船している船が遭難した時などで、生命の危険がある場合に認められる遺言です。飛行機による遭難でも認められます。

遺言の方式は一般危急時遺言と同じですが、より緊急時となるため、一般危急時遺言よりも要件が緩和され必要な証人は2人です。

作成方法 証人の1人へ口授により作成。その証人は筆記を行なう。
証人 2人以上の立ち会い
遺言者による署名・捺印 不要
家庭裁判所の確認 必要

一般隔絶地遺言

伝染病隔絶地遺言とも呼ばれ、伝染病による行政処分のため遺言者が一般社会との交通を遮断されている場合に作成されます。伝染病以外でも、災害で交通が遮断されたり、刑務所に服役中などで一般社会から隔絶している場合にも認められます。

危急時遺言とは異なり、遺言者に必ずしも死期が迫っているわけではないため、遺言書は遺言者自身が作成し、署名・捺印の必要があります。また家庭裁判所による確認は必要ありません。

作成方法 遺言者自身が作成。
証人 警察官1人と他に1人以上の立ち会い
遺言者による署名・捺印 必要
家庭裁判所の確認 不要

船舶隔絶地遺言

船舶に乗船している際に作成する遺言です。難船危急時遺言とは違い、飛行機搭乗時は認められません。

一般隔絶地遺言と同じく危急を要しているわけではないため、遺言者自身で遺言書を作成します。
証人以外は一般隔絶地遺言に準じます。

作成方法 遺言者自身が作成。
証人 船長または事務員1人と他に2人以上の立ち会い
遺言者による署名・捺印 必要
家庭裁判所の確認 不要