相続人と法定相続人

法定相続人とは

「相続人」とは、実際に相続をする(した)人を指します。例えば「遺言」により「法定相続人」以外の人にも相続された場合は、その人も「相続人」となります。「法定相続人」とは、民法により定められている相続可能な人の事を指します。「法定相続人」が受ける「法定相続分」も定められています。

故人(被相続人)が「遺言」を残していなかった場合は「法定相続人」が「相続人」となり、相続することになります。故人(被相続人)が「遺言」を残していた場合は、「遺言」に従って相続が行われますが、「法定相続人」には「遺留分」が認められています。

遺留分侵害額請求

法定相続人と法定相続分

配偶者相続人

故人(被相続人)の「配偶者」(妻または夫)は常に相続人となります。ただし、内縁の夫・妻や、離婚後の元夫・元妻は「法定相続人」にはなれません。(遺言等での相続は可能です)「配偶者」の「法定相続分」は「血族相続人」の順位により1/2から3/4となっています。

血族相続人

「血族相続人」は第一から第三までの順位が定められています。上位の相続人がいなかった場合に限り、下位の相続人に相続の権利が発生します。

第一順位 子(直系卑属)

「子」は故人(被相続人)の実子だけでなく、養子・非嫡出子でも、法律上の親子関係(養子縁組や認知されている)であれば「相続人」となります。
なお、非嫡出子の場合は民法900条4号の但し書きに「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」との規定がありましたが、平成25年9月4日最高裁判所によりこの規定は違憲のため無効であるとの判決が出されました。
よって嫡出子・非嫡出子にかかわらず、法定相続分は同等となります。また、「子」がすでになくなっていた場合でも「孫」(故人からみた場合)がいれば、「代襲相続」により、「孫」が「子」に代わって「法定相続人」となります。
「法定相続分」は故人(被相続人)に「配偶者」がいる場合は1/2、いない場合は相続の全部をその人数で割った分となります。

第ニ順位 父母(直系尊属)

故人(被相続人)に「子」や「孫」がいなかった場合「父母」が、「父母」がいない場合は「祖父母」が、「祖父母」もいない場合には「曽祖父母」が「法定相続人」となります。
第二順位の人が「法定相続人」となった場合の「法定相続分」は故人(被相続人)に「配偶者」がいる場合は1/3、いない場合は相続の全部となります。

第三順位 兄弟姉妹

故人(被相続人)にとって、第一順位・第二順位に当たる人が誰もいない場合は、故人(被相続人)の「兄弟姉妹」が「法定相続人」となります。
「兄弟姉妹」のうち、すでに亡くなられた方がいた場合、その方の「子」(故人からみた甥・姪)が「代襲相続」により「法定相続人」となります。(※第三順位の代襲相続は1世代のみとなります。)
第二順位の人が「法定相続人」となった場合の「法定相続分」は故人(被相続人)に「配偶者」がいる場合は1/4、いない場合は相続の全部をその人数で割った分となります。

法定相続分

「法定相続分」とは故人(被相続人)が「遺言」を残していない場合に適用されます。

故人(被相続人)に「配偶者」がいない場合は、「血族相続人」で該当する「法定相続人」全員の人数で配分します。

故人(被相続人)に「配偶者」がいる場合は、「配偶者」と「血族相続人」で配分することになりますが、「血族相続人」の順位により配分は変わります。また「血族相続人」の相続分は、それをさらに該当する「法定相続人」で均等に分配します。

配分表
相続人 相続する割合
配偶者のみ 配偶者 100%
配偶者と子(第一順位) 配偶者 1/2 子(全員で) 1/2
配偶者と父母(第二順位) 配偶者 2/3 父母(全員で) 1/3
配偶者と兄弟姉妹(第三順位) 配偶者 3/4 兄弟姉妹(全員で) 1/4

※横にスクロールできます。

代襲相続

「代襲相続」とは、本来「血族相続人」になりえるはずだった人が、相続開始以前に既に亡くなっていた場合などに、相続の権利がその方の「子」や「孫」に移る制度です。

この制度は故人(被相続人)の直系卑属(子や孫など)と兄弟姉妹の子にしか認められていません。ですので、例えば子供がいない夫婦の妻(仮に本人とします)で夫が既に亡くなっていて、その夫の父(本人からみた義父)が亡くなった場合、配偶者には代襲相続の権利がありませんので、相続権はない事になります。逆にこの夫婦に子供がいた場合には、すでになくなっている夫に代わり、子供が「代襲相続」により相続権を持つことになります。

「代襲相続」は本来の相続人がすでになくなっている場合以外にも、「相続欠格」・「相続人の廃除」によって相続権を失った人に対しても適用されます。ただし「相続放棄」をした場合には、最初から相続人ではなかったとして扱われるため、「代襲相続」の制度は適用されません。

相続の「欠格」と「排除」

「法定相続人」は「相続」をしたくない場合には、自らの意思により「相続放棄」の手続きをすることによって「相続人」ではなくなりますが、「相続」する意思があっても、相続資格を失う場合があります。それが「相続欠格」と「相続人の廃除」です。

相続欠格

「相続欠格」とは、「法定相続人」が「相続」に関して不当な利益を得るために、不正行為をした、もしくは、しようとした場合に「法定相続人」としての資格を失うことです。不正行為とは主に生命侵害行為や遺言への違法な干渉行為で、このような行為をした(しようとした)場合は、手続きによって「相続欠格」になるのではなく、法律上当然に「相続欠格」となります。具体的な内容は民法891条に規定されています。

民法第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一.故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは、この限りでない。
三.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

この民法891条が適用され「相続欠格」となるのは、故意(過失ではない)であり、かつ、相続上の利益を得る目的があるとされなければならないとされています。

「相続欠格」者は、遺贈を受けることもできません。しかし、「相続欠格」者の「子」による「代襲相続」は可能です。

相続人の廃除

「相続人の排除」とは、「被相続人」の意思により、手続きを経て、相続開始時に「法定相続人」となるであろう人(推定相続人)から相続権を奪うことです。「相続させたくない人」がいた場合、「遺言」により相続させなくすることができますが、その「相続させたくない人」に「遺留分」がある場合は、「遺留分減殺請求」をされた場合に対抗できません。よって「相続人の排除」は「遺留分がある推定相続人」に対して行なうことになります。

実際の手続きは、「被相続人」が直接家庭裁判所に申立てる、もしくは「遺言書」に記載して「遺言執行者」が家庭裁判所に対し「相続人の排除」を行なうこととなりますが、いずれも家庭裁判所による「調停」または「審判」により確定されます。また一度行った手続きを取り消すことも可能ですが、排除された本人が排除取消を求めて請求することはできません。

「相続人の排除」を行なうには、民法第892条により次の事由がある場合に限られています。

  • 被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えた時。
  • 推定相続人にその他の著しい非行があった時。

この民法第892条の事由が認められるには、相応の理由でなければならず、単に「仲が悪いから」、「言うことを聞かないから」程度では認められることはありません。

また「相続人の廃除」を受けた者は「相続欠格」とは異なり遺贈を受けることができます。また「子」による「代襲相続」も可能となっています。